ステーブルコイン市場規模「7500億ドル」が、米国債市場再編の転換点に：スタンダードチャータード | CoinDesk JAPAN（コインデスク・ジャパン）

• ステーブルコインの市場規模が約7500億ドル（約111兆7500億円、1ドル149円換算）に達すると、米国債市場と金融政策の構造が変化し始める可能性があると、英銀スタンダードチャータードのジェフ・ケンドリック氏は述べた。
• ステーブルコインの新規発行企業やGENIUS法のような法整備を背景に、市場規模が現在の2400億ドル（約35兆7600億円）から2026年末までに3倍を超える規模に拡大すると、同氏は予想。
• サークルの株価が上場以来540%急騰したことは、ステーブルコインがデジタル金融の基盤として存在感を増していることを浮き彫りにしている。

スタンダードチャータード（Standard Chartered）のデジタル資産調査部門責任者、ジェフ・ケンドリック（Geoff Kendrick）氏によると、ステーブルコイン市場が約7500億ドル（約111兆7500億円）規模まで成長すれば、伝統的金融の再編が始まる可能性があるという。

ケンドリック氏によると、暗号資産（仮想通貨）業界の関係者、ファンドマネージャー、政策立案者の間で、この7500億ドルという数字が、ステーブルコインが純粋な需要を通じて国債発行、金融政策、米国債市場構造に影響を与え始める転換点になるというコンセンサスが高まっている。同氏が、ワシントン、ニューヨーク、ボストンを1週間かけて訪問した後の15日に発表したメモの中で述べた。

現在のステーブルコイン市場規模は、約2400億ドル（約35兆7600億円）。だが、ケンドリック氏の関係者らは、ステーブルコインの利用拡大と規制の明確化、特に超党派的なGENIUS法が成立すれば、2026年末までに3倍を超える規模に拡大すると予想。GENIUS法は、早ければ来週にも成立する可能性がある。

「米国では、ステーブルコイン市場が一定規模に達すると、ステーブルコインを裏付けるために必要な短期国債の発行量の増加に伴い、発行計画は短期国債の発行を増やして長期国債の発行を減らす方向へシフトする可能性が高い」とケンドリック氏は書いている。「これは、米国債のイールドカーブの形状や米ドル資産の需要に影響を与える可能性がある」

ステーブルコインは、通常は1ドルに固定された価値を維持するよう設計された暗号資産であり、一般的には現金同等物の準備金によって裏付けられており、そのほとんどが短期米国債だ。需要が高まるにつれて、大量の米国債を保有する必要性も高まり、ステーブルコインは従来の債券市場と衝突する可能性がある。

ケンドリック氏は米国訪問中に、ビットコインマイナー、暗号資産ネイティブ企業、伝統的なヘッジファンド、政策当局者など、幅広い市場参加者と会談したと述べた。これらの市場参加者の中でほぼ共通の関心事は、ステーブルコインだ。

市場参加者は、暗号資産企業だけでなく銀行や地方自治体でもステーブルコインの発行が相次ぐ可能性があると予想している。

新興国市場への影響

新興国市場が最も直接的な影響を受ける可能性がある。ケンドリック氏は、これらの地域の人々がステーブルコインをデジタル貯蓄手段として利用し、現地の銀行システムや中央銀行の準備金から資金を引き出していることへの懸念を指摘。これは、固定為替レートや資本規制の管理を米ドルの流動性に依存している国々の金融安定性に影響を及ぼす可能性がある。

米国では、ステーブルコインは、企業の資金を従来の銀行からトークン化された現金代替手段にシフトさせる可能性がある。だが、企業がどの程度の現金をオンチェーンに移行させるか、その速度がどの程度になるかは依然として不透明だ。

こうした注目の高まりは、公開市場にも反映されている。ステーブルコイン「USDコイン（USDC）」の発行企業であるサークル（Circle） の株価は、先月の上場以来540%急騰。この急騰は、ステーブルコインがデジタル金融の次なるフェーズの中核を担うという投資家の信頼感を示している。